交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
くすっと笑って歩き出す彼の背を追う。それは、マンションのことなのか、それとも……

手のひらから伝わる彼の温もりが、つま先から頬までを熱で包む。

一緒に暮らし始めるのだし、夫婦になるんだからこれくらいの接触でオーバーヒートしていてどうする、とは思うけれど。

どうか、どうかお手柔らかにお願いしたい。
どこを取っても初心者の私に、一織さんと夫婦としての生活は、少々刺激が強めの毎日になりそうだ。



「す、すごい…! 広い!広いです一織さん!」

リビングダイニングとキッチンの広さに驚き、すっかり興奮した私は彼を仰ぎみる。
こんなに広い部屋にひとりで住んでいたなんて、改めて一織さんのスペックの高さに圧巻された。

「気に入ってもらえたようで何よりだ。 小梅の部屋はこっち」

上層階なだけあって、窓からの景色も綺麗だ。

余っている部屋がふたつほどあり、そのうちひとつを私の部屋にと用意してくれた。
ウォークインクローゼットも大きくて、私が持ってきた荷物は全てこの中に収まってしまいそうだ。

「今日の午後にはベッドが届くよう手配してあるから、それまでにできるだけ荷物を片付けておこう」

「はーい! 一織さんも新しいベッドを買ったんでしたもんね」

「ああ。いい機会だと思ってな」

実家から引っ越すのに新しく購入したものと言えばベッドくらい。
一織さんの知り合いのお店で、彼が懇意にしているインテリアショップをおすすめしてもらったのでベッド選びはスムーズに決まった。

同じタイミングで、一織さんもベッドを買い換えたのだ。ちなみにお揃いだったりする。
寝室を一緒にするかどうかを話し合った結果、私たちにはまだ踏むべき段階があるということで、とりあえず部屋は別々。

これからそれが変わるのかもしれないと考えると少し照れるのでやめよう。
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