交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「頼んだのはシングルが2つだ。キングサイズを注文した覚えはないのだが」

「でも椎名さんがこれを持ってけって……あ、そうだ、メモを預かってるんでした! はい、これ」

一織さんと話しているスーツの小柄な男性がメモを渡す。

「っ、椎名、あいつ余計なことを…」

「なんて書いてあったんすか? えーと? 『深山へ。 俺からの結婚祝いだ。奥さんと仲良くやれよ!』 なーんだ、やっぱり俺の上司は友達思いの良い方じゃないっすか〜!」

「いや、悪いが一度持って帰って…」

「問題ないみたいなので、俺はこれで! 奥様によろしくお伝えくださ〜い」

「ちょ、おい!」

一織さんの声は届かず、彼は大きなダンボールを置いて行ってしまった。

「一織さん?」

「すまない、小梅。 手違い、というか、オーナーの不手際でベッドがひとつしか届かなかった。今からそいつに苦情はつけるが、今夜には間に合わないだろう。俺はソファで寝るから、小梅はこれを使え」

申し訳なさそうにする彼に、私は慌てて頭を振る。

「そんな、私はどこでも寝れますし、一織さんのお家なんですから、布さえあれば私が床で、」

「駄目だ。どこに妻を床で寝かせる夫がいる? それに、もうここは小梅の家でもあるんだ。小梅にとっても寛げる場所じゃないと意味がない」

「でも、だからって一織さんをソファに追いやるのは…――」

渋る私に彼は被せるように言う。
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