交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
その様子をなんとはなしに見ていて気づく。
背は高く、質の良さそうなスーツを完璧に着こなすスタイルの良さ、そして整った顔立ちをしている。

雨に濡れているのにも関わらずそう見えるのだから、リアルに水も滴るいい男といった感じだ。

外観や内装は部分的に修繕を重ねた古い造りな定食屋には似ても似つかないな、と思いつつ、両親は厨房の奥の我が家に戻っていていないので、ふたりきりの静かな時間を遮るように聞いた。

「傘を持っていなかったんですか?」

「…いえ、朝持って出たんだが、後輩に貸し出してしまって。俺は外に出る予定はなかったから」

それが、急に予定変更になったのだと彼は表情を変えることなく淡々と言う。

「お優しいんですね。お勤めご苦労様です。でも、今日は台風ですよ。今は風は強くないですし、忘れ物の傘があるので持っていってください」

「また走るので大丈夫です。タオル、助かりました」

「え!?ダメですよ、人間体が資本なんですから、ちゃんと傘をさして安全に帰ってください!」
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