交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「できましたね! 本当に大きい!キングサイズのベッドなんて初めて見た!」
「これなら2人で寝ても余裕があるな」
「うんうん。あ、そうだ。椎名さんにお礼しないとですね! ベッドの他にも、家具を購入するのに懇意にしていただいたって…」
「あぁ、それなら…」
そこで一織さんの言葉を遮るようにインターホンが鳴った。
寝室を出て、ふたりでモニターを覗き込む。
「どちら様でしょうか。宅配便…ではなさそう」
小首を傾げていると、一織さんがふぅとため息をついて応答ボタンを押した。
「椎名…何の用だ。発注ミスのベッドなら昼間届いたぞ」
モニター越しの彼にとても気だるそうに言ったと思ったら、今度は私を見て眉を下げた。
「家具屋の椎名だ。悪い。どうせ大した用はないだろうし、ちょっと出てくるよ」
『おーい、聞こえてるぞー。結婚祝いに来てやった友人にその言いよう、ほんと酷いよな、俺の事嫌いなの?』
「うるさい。祝いに来いと頼んだ記憶はないんだが」
『もう!一織じゃ話にならん。奥さん、こんばんは。俺椎名って言います。一織の親友で、家具屋やってます。ところで、お祝いに美味しいお酒持ってきたんで、お邪魔してもいいですか?』
画面の向こうでは、にこにこと愛嬌のある笑顔を浮かべて楽しそうに自己紹介をする椎名さんに、一織さんがまたひとつため息をついた。
めげない椎名さんに、冷たくあしらう一織さん。そのなんとも言えない空気感がおかしくて、私はふふっと笑ってしまった。