交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「ん〜いい香り。お腹空いちゃいますね」
すっかり目も覚めた様子で身支度を済ませたらしい小梅に目をやって、パジャマ姿の気の抜けた感じもいいけど、やっぱり可愛らしいよな、と密かに思う。
彼女の纏う空気はどこかふわふわしていて、一緒にいるとこちらまで落ち着く気がする。
なんて、勝手に彼女を意識しているなんて知られたら、そんな素は見せてくれなくなるかもしれないから言わないけれど。
「和食は小梅のほうが得意だろう? ほんとに期待はするなよ」
「一織さんも十分すごいですよ! 動きがスマートっていうか、朝から爽やかでかっこよかったです!」
味噌汁と焼き魚と卵焼き。極々普通のメニューなはずなのに、小梅は嬉しそうにする。
そんなに褒めても何も出ないぞ。とか思いつつ、嬉しさを隠して平静を装うのに尽力した。
「ありがとう。 食べるか」
さらっと言って、小梅が「はい!」と元気よく返事をしてくれたのに安心する。
小梅に喜んでもらいたい。彼女の笑顔を見たい。…一緒にいると、落ち着く。
そんなふうに思える相手が今目の前にいることが、なんだか不思議で、信じられないような気持ちになった。