交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「とりあえず、1泊2日でグランピング旅行。あまりのんびりはできないかもしれないが、俺は小梅と行きたい」

「…っ、ずるいです。その誘い方は。私だって、一織さんと旅行、したいです」

口をとがらせて俺を見上げる瞳を見つめて、また胸が小さく跳ねた。
小梅といると落ち着くけど、心拍数は上がるのだから矛盾しているな、なんて的はずれなことを考えて、それから彼女の手を握る力を強めた。

「…決まりだな」

「はい! …た、楽しみ、ですね」

徐々につき始めた街頭に照らされた小梅の顔がかああっと赤くなるのが分かる。
言うか言うまいか、迷った末に言ってみたらしい。

「あぁ。楽しみだ」

また小梅と出かけられる予定ができて、それを小梅が楽しみにしてくれている。ドクドクとうるさい鼓動は知らないフリをして、俺はいつも通りを装い冷静に答えた。

小梅が結婚を承諾してくれた時、『あなたにとって良きパートナーになれるよう努力します』とかなんとか言ったけど、努力とは何をすればいいのだろうか。

努力するとは言ったけど、いまいち距離の詰め方が分からなかった。
お互いにとって心地よい関係でありたいと思うから、小梅が喜ぶことをしたいし、できればそれを共有もしたい。

これは俺のわがままなのかもしれないが、小梅はいつも楽しそうにしてくれるから、間違ってはないと、思いたい。


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