交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「そっか、一織さん、社長をされているんですもんね」

そう言って控えめに微笑んだのが、どこか寂しげだったのは俺の思い過ごしだろうか。
もしそうだとしても、どうして寂しいと感じるのか分からなかったから、その時は特に触れることなく俺は頷くだけだった。

昼間、BBQでそれなりの量を食べた気もするが、その後体を動かしたおかげでコース料理も美味しく腹に収まった。

小梅も同じことを言い出すので、顔を見合せて笑った。

食後のコーヒーを嗜みつつ今日のことを話している間、そわそわと落ち着かなかったのがバレていないだろうか。

20時丁度、ぽつりぽつりと灯りが見える程度だった辺りが、一気にライトアップされていく。

小梅が隣で息を飲むのが分かる。
一番の席で見るこの日限りのライトアップは、他でもない小梅のために施したものだ。

「綺麗…」

「そうだな」

ほうっと息をついたのを悟られないよう、なんでもないみたいに振る舞う。
成功、だよな。
今日を、何年経っても思い出せるようにと、人生で初めて計画した秘密のサプライズ。種明かしはしないつもりだから、心の中で勝手にガッツポーズをしておく。
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