交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
それもこれも、一織さんのおかげだ。毎日、きっと私には計り知れないほど責任のある職に就いていながら、私のことも気遣って大事にしてくれているのが伝わる。

胸元で控えめに輝くリングに触れ、思わず笑みがこぼれた。
早く帰ろう。一織さんを、暖かい夕飯と共に迎えるために。

「古嵐さん?」

不意に背後から声がかかった。
聞き覚えのある声に振り返ると、私の顔を見て「やっぱり!」と栗色の髪を揺らした。

「戸川くん…!」

「久しぶりだね。高校卒業以来かな」

「久しぶり。元気にしてた?」

「変わりないよ。古嵐さんも、元気そうだね」

中学、高校の同級生の戸川くん。彼の言う通り、同じクラスになることが多かった学生時代を過ごして高校を卒業してから、会うのは初めて。
私にとって彼はクラスメイトのひとりで、周りの男の子よりも落ち着いていて優しい雰囲気だったから話しやすかった。

だけど、戸川くんにとっては……
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