冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
——— 遙斗はあなたが思っている以上にずっと茉白さんとLOSKAのことを気にかけていますよ

「どうして…」
茉白はいつも聞けずにいた言葉を口にした。


「俺は…あのパーティーに君を招待したことを後悔してる。」

「後悔…?」

「あのパーティーが無ければ、君が影沼に会うことは無かっただろ?」

「そんな…後悔なんて言わないでください…!あの日のことは私にとっては…夢、みたいな…宝物みたいな…大切な思い出です…」
茉白が言うと、遙斗は右手の指の背で茉白の頬に触れた。
茉白の心臓がトクン…と大きく脈打つ。

「俺は誰かの思い出になるためにいるわけじゃないよ。」
遙斗の目が寂し気に笑う。

「………」

「あの日、あのままドライブに連れ出してれば良かったな。」

「………え、えっと……」

遙斗が触れる頬が熱を帯び、茉白の鼓動がどんどん早くなる。

「どうして、なんて…単純な理由だよ。」


「君のことが好きだから、いつも君のことを考えてる。」


時間が止まってしまったように、遠くから聞こえていた車の走る音や木が騒めく音が聞こえなくなった。


「……う、うそ…そんなことあり得ないです…」


「嘘だな。君だって本当は気づいてただろ?」

茉白は首を大きく横に振る。


「…だって、だめです…そんな…シャルドンの雪村専務が—」


茉白の言葉を遮るように、遙斗は茉白を抱きしめた。


「だめとかいいとか、そんなんじゃなくて、君の本音が聞きたい。」


「………」


茉白は遙斗の背中に恐る恐る手を回し、遠慮がちにギュ…と力を入れる。


「……すき…です…」


遙斗が抱きしめる腕の力を強くする。

「茉白」

遙斗に呼ばれた名前が耳元から胸に響く。
茉白は心の中の踏み固められた雪が溶けていくような感覚を覚えた。
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