冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
シャルドンエトワール本社・商談ルーム

上機嫌の影沼と暗い表情の茉白、対照的な表情で二人は遙斗を待っていた。

(私が影沼さんのこと、曖昧にしてきたから…)

しばらくするとドアが開き、遙斗と米良が入室する。
茉白は結局迷惑をかけてしまったという後ろめたさで、遙斗の顔をまともに見ることができない。

「お久しぶりです、雪村専務。LOSKAの影沼です。」

「真嶋さんとの商談のつもりでしたが。」
怪訝な顔をする遙斗に、影沼は笑顔になる。

「今は私がLOSKAの営業部長をしていまして、真嶋の後任は私が務めます。」

「へぇ…」

「本日は新商品のポーチのご紹介にあがりました。」
そう言って影沼はメイクポーチのサンプルをテーブルに並べた。

(………)

それは形の歪んだ、とてもクオリティが高いとは言えないもので、茉白にはすぐに綿貫が言っていたものだとわかった。
遙斗はポーチを手に取ると、茉白との最初の商談のときのようにファスナーを何度か開閉し、中の縫製のクオリティをチェックした。

遙斗は呆れたような溜息を()いた。

「話にならない酷いクオリティですね。」

(…やっぱり…)

「このクオリティのものはシャルドン(うち)では取り扱えません。」
遙斗は乾いた声で言った。

「…茉白さんの会社の商品でも…ですか?」

「影沼さん!…やめてください!」
茉白が悲痛な声で言った。

「おっしゃっている意味がわかりません。」

表情を変えずに言う遙斗を見て、影沼は先程の写真をテーブルに広げた。

「彼女はいずれ私と結婚するというのにこんな写真を撮られておいて、よくそんなことが言えますね。」

遙斗は写真を一枚手にとると無言で眺めた。

「これからも商品を仕入れていただいて良い関係を築いていけるなら、彼女に婚約者がいることを週刊誌には言いませんよ。御社もLOSKAも傷つかずに済む。」

「影沼さんっ!!」


「…そうですね、仕入れてもいいですよ。」

「え…」
遙斗の言葉に茉白は耳を疑った。
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