冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「ところで、その絵は何ですか?」

米良が茉白の手元の資料に描かれたラクガキについて質問すると、茉白はギクッとした。
その反応に、遙斗が興味を示した。

「何それ?俺も気になる。虫?」

「虫…ではないです…」
茉白の言葉の歯切れが悪くなる。

「じゃあ何?」


「……ワニ…です…」


———ぷっ

「本当に下手だな。」
遙斗が笑って言った。

「なんでワニなんですか?」
米良も笑いを堪えているのがわかる。

「………」

「なんなんだよ。黙られると余計気になる。商談中にラクガキなんて失礼なんだから理由くらいは言ってもらわないとな。」

「…ゆ、雪村専務を見てたら…ワニを思い出して…何か商品にならないかな…と…」

「は?俺?」

茉白は気まずそうにコクっと頷いた。

「笑ってるのに、目が笑ってなくてワニ…ぽいです…」
茉白は遠慮がちに小さな声で言った。

———プッあはは

今度は米良が声をあげて笑った。

「おい!」

「似てる似てる!ワニだな!」

「笑いすぎだ。だいたいワニってもっとかっこいいだろ…なんだよこれ…」
遙斗は茉白が描いた虫にしか見えないワニの絵をまじまじと眺めながら眉間にシワを寄せた。

「しかもなんか持ってるな、こいつ。時計?」

「…時間に追われてお忙しそうなので…ピーターパンの…チクタク時計ワニかなぁ…って…」

「誰のお陰で朝から忙しいと思ってるんだよ!」

「す、すみません〜!だから言いたくなかったんです…」

二人のやり取りに、米良はますます大きな声で笑っている。


(でも、昨日会った時よりはワニみたいに怖くない…かも…)

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