冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
遙斗に言われ、茉白はハッとした。

「す、すみません!はじめまして、株式会社LOSKAの真嶋と申します。よろしくお願いします。」
そう言って、茉白は急いで名刺を差し出した。

「シャルドンエトワールの雪村です。」
「ちょうだいします…」

茉白は遙斗の名刺を受け取ると、まじまじと見つめた。
(雑貨部門・エグゼクティブマネージャー…)
そこに“専務”の肩書きはなく、どうやら雑貨バイヤーとしての名刺のようだ。

「どうぞ、おかけください。」

「は、はいっ」

遙斗は背が高く、奥二重のアーモンドアイに鼻筋の通った、華やかで迫力すら感じる美形の顔立ちで、染めたのでは無さそうなナチュラルな茶色味のある髪をしている。
そのビジュアルのせいか、雑誌やテレビの経済番組などで取り上げられることも多い有名人だ。
そんな人物が突然目の前に現れたので、茉白は幾分気後(きおく)れしてしまっていた。
遙斗の一歩後ろには秘書らしき男性が立っているが、遙斗の圧倒的なオーラの前に茉白はしばらく存在に気づかなかったくらいだ。

(さすがに仕立ての良いスーツ着てるなぁ…髪もサラサラで…生で見るとめちゃくちゃ迫力ある…)

商談ルームの大きなガラス窓から差し込む陽光で遙斗の髪がキラキラと輝いている。

「いつになったら商談が始まるんですか?」
座ってからしばらく遙斗に見入ってまた無言になっていた茉白に、遙斗が不機嫌そうな声で言った。

「あ!す、すみません!」

茉白は慌てて営業用のスーツケースからポーチのサンプルを取り出す。

「えっと…本日はメイクポーチの新商品のご紹介に伺いました。新商品は2タイプあって、それぞれ4色ずつの展開です。」
パステルカラーのシェル型とバニティ型のポーチを商談テーブルに並べ、説明を始めた。

「女子の好きなパステルカラーで、今人気のクリームソーダをイメージした—」

茉白は遙斗の視線に緊張しながらも説明を続ける。

「前任の樫原さんにはラフの段階で一度お見せして、好評だったので御社の店舗の雰囲気にも…」

———はぁっ

茉白がそこまで説明すると、遙斗が呆れたような大きな溜息を()いた。
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