冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
遙斗に促されついて行った先にあったのは、メイクルームのような部屋だった。
この部屋の壁は先程とは違うブルーの花柄の壁紙だ。大きな鏡のついたアンティーク調のメイク台に、シャルドングループのものらしいメイク道具が備えつけられている。
置いてある荷物から察するに、どうやら今日、遙斗とおそらく米良も一緒に控え室のように使っている部屋のようだ。

「あの…?」

状況が飲み込めない茉白は戸惑った表情のまま立ち尽くしている。

「そのドレス、メアクロ?」

遙斗が聞いた。メアクロとはMary's Closet(メアリーズクローゼット)というアパレルブランドだ。

「すごい、よくわかりますね。母が昔、Mary's(メアリー)のパタンナーをしてたんです。その頃のなので古いものなんですけど、ずっとお気に入りで…」
茉白は照れ臭そうに言った。

「メアクロは服のシルエットがきれいだから昔のものでもすぐにわかるよ。元々クラシカルなデザインが得意なブランドだから、昔のものでも古いとは思わない。良いブランドだよね、俺も好き。よく似合ってると思うよ。」

「………ありがとうございます…」

照れもせず真顔で言う遙斗に茉白の方が照れ臭くなり、女性を褒め慣れている遙斗と自分の住む世界の違いをまた感じる。

「ただし、メイクはもっと自分に似合うものにした方がいい。」

「……パーティー向けのメイクってよくわからなくて…それに、ご存知の通り絵が下手なので…」

「説得力がすごいな。」
申し訳なさそうに言う茉白に遙斗が笑って言った。


「良かったら、俺にメイクさせてくれない?」

「え……え!?」
遙斗の言葉の意味が理解できなかった。

「顔に触れることになるから嫌なら断ってくれても構わないけど。」

「………」

よくわからない遙斗の提案に茉白は一瞬考えた。

「じゃぁ…お願いします。」
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