冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「こちらは来月発売の新商品で—」

この日、茉白は莉子や他の営業部メンバーと一緒に雑貨の展示会で自社ブースに立っていた。

展示会とは、小売店や卸売業向けの商談会のようなもので、いろいろなメーカーが会場内の自社ブースに商品を並べて、来場した店舗のバイヤーに説明をしながら商談する場だ。
様々な業種が混ざった展示会もあれば、コスメ業界、玩具業界、文具業界…など、商品ジャンルで区分された展示会もある。
今回は“生活雑貨”という括りで、コスメやキッチン雑貨、ファッション雑貨など比較的広い商品ジャンルの展示会だ。

「盛況ですね。」
茉白に話しかけたのは影沼だった。

「そうですね、さっきからひっきりなしにお客様が来てますね。」

今回は影沼の提案に乗る形で、AmselとLOSKAが隣同士のスペースに申し込み、ブースを繋げて共同で出展している。

「影沼常務もイケメンですよね。私の好みではないですけど。」
接客中の影沼を見て、莉子がこそっと茉白に言った。

「莉子ちゃん何言ってるの…真面目に仕事して。」

「えーでも、影沼常務は茉白さんのこと狙ってそうですけど。」

「は?無いでしょ。」

「そうかなぁ…あ、私のお客さんだ、こんにちは〜!」
莉子は言いたいことを言って、接客に行ってしまった。

(…影沼さんが?)

——— 気になる女性くらいはいますよ。

ふいに影沼が食事の席で言っていたことを思い出した。
(…いやいやいや、まさかぁ…)

茉白がそんなことを考えている背後で、女性たちのざわめく声が聞こえてきた。
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