冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「えっと……」
茉白が珍しく迷ったように答えを出せずにいる。

「前に言ってたプリント生地の発注の問題?」

「いえ、生地の発注はまだ間に合いますし、発注してしまってから使用する商品ラインナップや使用する割合をある程度変えることもできるんですけど…」

「けど?」

「LOSKAは折り畳み傘が弱いっていうジンクスみたいなものがあるみたいで…社長や昔からいる社員が作りたがらないんです。」

「ジンクス?なんだそれ、くだらないな。」
遙斗が溜息混じりに言った。

「弱いというのは具体的に?」
米良が聞いた。

「昔は何度か折り畳み傘も発売したらしいんです。でも毎回売れ残って、最終的に在庫をディスカウントショップに安値で引き取ってもらうような事が続いたみたいで。傘となると金額が大きくてリスクも大きいので…」

「それは確かに及び腰になりますね。」

「いや…LOSKAのデザインで何度もそんな事になるか?当時はもっと奇抜な柄だった、とか?」
遙斗が不思議そうに聞いた。

「いえ、前に昔のカタログも見せてもらったんですけど、そんなことは無かったです。すごく小さくなる傘とかも載ってて便利そうだったんですけど…」
茉白も“言われてみれば”と、不思議そうな顔をした。

(よく考えたら確かに折り畳み傘だけが突出して売れないなんておかしい。もっとちゃんと理由を聞くべきだった。)

「とにかく、うちとしては折り畳み傘の製造を検討して欲しい。うちに ある程度の数量を納品できればリスクはそれなりに抑えられるんじゃないか?」

「そうですよね。…会社に戻ったら、昔の事をもう少しちゃんと調べて検討します。ありがとうございます。」
茉白はPCのメモに記入した。
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