冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「否定されていましたけど、茉白さんには好きな方がいるんじゃないですか?」

「え…」
また遙斗の顔を思い浮かべた。

「いませ—」
茉白はまた否定しようとした。

「茉白さんに好きな相手がいても構いませんよ。」

「え…」

「私は、恋愛ではなく結婚の話をしています。そのお相手の方は結婚相手に相応しい方ですか?」

(結婚相手に相応しいか?…そんなの…)
茉白は首を横に振った。

結婚も何も、遙斗は想いが通じることすら叶わない相手だろうと思う。遙斗が相応しくないのではなく自分が相応しくない、と茉白は思う。

「気持ちは後からついてくればいい、私はそう思っています。私は茉白さんもLOSKAも守っていきたいと思っています。」

「LOSKAも…」

すぐに断るつもりだった茉白だが、影沼の真剣な目を見て、なかなか言葉が出なかった。

「せっかくなので食事をしましょう。」
黙ってしまった茉白に影沼が提案した。

「…はい」
茉白は力の入らない笑顔で言った。


食事を終えると、影沼は茉白を家まで送り届けた。
門の前で、茉白は影沼に話の続きを切り出した。

「影沼さん、すみません。やっぱり私はあなたとは—」

「待ってください。」
影沼が、断ろうとする茉白を止める。

「何も今日返事をする必要は無いじゃないですか。」

「え…」

「もっと…私の働き振りなどを見て、会社のことを考えてお返事をください。」
影沼がまた困ったような笑顔で言った。

「じゃあ……はい…もう少しだけ考えてみます。」

茉白の頭には縞太郎の顔が浮かんでいた。
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