冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
この日は影沼に制止される前に茉白が社用車の運転席に乗り込んだ。

「いくつか営業先を回って、最後にシャルドンさんに立ち寄って荷物を届けて会社に戻ります。」

「シャルドンさんは商談ではないんですね。」
影沼はどことなくがっかりしたような声で言った。


「こんにちは〜」

「あ、真嶋さん。こんにちは。」

茉白はシャルドンに行くまでに小さな雑貨店や、チェーン系の店舗などを回り、売れ行きの確認をしたり、新商品の受注をしたりした。
その間、影沼はニコニコと愛想良く付き添い、ときにAmselの名刺を出してLOSKAとの店頭での展開の提案などをした。

「店頭展開の提案ありがとうございます。」

「いえ、うちの利益にもなりますから。」

(仕事は本当にすごく熱心だよね。)


シャルドンエトワール・本社

受付を済ませた茉白と影沼がエントランスホールで待っていると、米良がやってきた。

「こんにちは、茉白さん。」

「米良さん、こんにちは。」

「…と、Amselの影沼常務?ご一緒ですか?」
影沼に気づいた米良が不思議そうな顔をした。

「えっと…最近少し、うちの仕事をお手伝いいただいてて…」
茉白はなんとなくバツの悪さを感じた。

「へぇ…」

「先日の展示会ではご挨拶しかできず、申し訳ありませんでした。」
影沼が軽く頭を下げる。

「いえ、あれはこちらの都合でしたので。」
米良はあまり気にとめていないといった表情で言った。

「えっと、これが傘のサンプル全種類です。できれば全種類ご注文お待ちしています!」
茉白は笑顔で言った。

「では、そのように雪村に伝えておきますね。」

(あれ、めずらしい。“雪村”って。)
米良は茉白の前では遙斗を親しみを込めて名前で呼ぶ。

(商談ルームじゃないからかな…)
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