冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「あ、そうだ。今日は資料もお持ちしてて。」
茉白がバッグからクリアファイルを取り出した。

「これ、LOSKAの昔のレイングッズのカタログです。先日お話しした売れなかった折り畳み傘が載ってます。」

「へぇ、後で雪村に渡します。売れなかった原因は、何かわかりました?」

「社内で昔のことを聞いてみたんですけど、どうも形が特殊だったのが原因じゃないか…って。なので、シンプルな形の折り畳み傘なら製造できそうです。」

「そうですか。それも伝えておきますね。」

「はい。よろしくお願いします。」


茉白はペコッと頭を下げ、エントランスに向かった。
ふと、女性社員が噂話をしている声が耳に入る。

「なんか雪村専務が今日会う商談相手って、お見合いも兼ねてるって噂だよ。」

「え、今日の商談って輝星堂(きせいどう)じゃなかった?超大手じゃん。もし結婚なんてことになったら、お互いのビジネスにプラスしかないんじゃない?」
輝星堂はコスメの最大手メーカーだ。

(………)

「さすが、大手企業の御曹司ともなるとすごいですね。」
一緒に噂を耳にした影沼が言った。

「そうですね…」

(いつかはそういう誰かと結婚するんだよね。いつか、が今回かもしれないし。きっと…会社のためになる人と…。)

——— だったら俺にも米良にするみたいに自然に笑ってくれない?

(あれは…ただ、仕事がしやすくなるように言ってくれただけの言葉…)


(会社のための結婚、か…)
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