冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
18時
シャルドンエトワール本社・役員室

「おつかれ。どうだった?“商談”は。」
社に戻ってきた遙斗に米良が言った。

「べつに。いつも通り。」

「社長が俺抜きでって言う商談は見合いを兼ねてるって、社内中にバレてるよ。」

「…だとしても、いつも通りだ。親父も本気で見合いさせたいわけでも無さそうだし。輝星堂はこれまで通り一取引先のまま。」

「この手の話が来すぎて、取引先にカドが立たないように断るのが面倒だからさっさと結婚して欲しい…とは言ってたけどな。」

「………」
遙斗はウンザリという顔をしていた。

「あれ?その傘…」
遙斗が部屋の隅に置かれたカラフルな傘に気づいた。

「今日、茉白さんが届けに来てくれたよ。」

「ふーん」

「Amselの影沼常務と一緒に。」

涼しい顔をしていた遙斗の表情が曇る。
「え?なんで…」

「LOSKAの仕事を手伝ってるって言ってた。遙斗がそんな顔するなんて珍しいな。」

「………」

「本当は自然な事業戦略だなんて思ってないんだろ?」

「…前にも言ったけど、自然だろうが不自然だろうがシャルドンが介入することじゃない。」

「シャルドンじゃなくて、雪村 遙斗としてなら?」

食い下がる米良に、遙斗は溜息を()く。
「…俺は生まれた時からシャルドンの雪村 遙斗だよ。」

米良は「やれやれ」という顔をした。

「これ、茉白さんが置いていった資料。売れなかった折り畳み傘だって。」

「ああ、例の…」

遙斗は茉白が置いていったLOSKAの古いカタログを捲った。

「………」
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