冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「昨日LOSKAさんにお送りいただいた資料には一通り目を通しました。」
遙斗が淡々とした口調で言った。

「ありがとうございます。」

「昨日の商談後すぐにお送りいただいて。“会社に資料がある”と言ったのは嘘では無かったんですね。」

「え…?」

「その場凌ぎの嘘で誤魔化して、会社に戻って急いで付け焼き刃の資料をつくる営業マンを何人も見ているので。」
遙斗はまた、目の笑っていない笑顔を見せた。

(…私が朝一で資料作ってくるかどうか試した、ってことか。)

茉白は早朝の商談の意味を察した。

「資料はよくまとまっていたし、おっしゃるようにポーチの品質も悪くないので仕入れを検討しますよ。では、今日はこれで。」

「え!?」

5分と経たないうちに立ち上がって商談を切り上げようとする遙斗に、茉白は思わず驚きの声を上げた。

「検討すると言っているんだから、もういいでしょう?忙しいのでこの辺で。」

「8時まで…」

「え?」

「昨日、米良さんは8時まで空いているとおっしゃってました。それに、“検討”じゃ不安です。」

茉白は遙斗を見据えて少し強い口調で言った。
脚は微かに震えている。


———フッ…くく…

遙斗の隣から堪えた笑い声が漏れた。
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