冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
翌日の昼休み
茉白は影沼をランチに誘い、前向きに考えていくことを伝えた。

「本当ですか?」
影沼もまた嬉しそうな表情を見せる。
「では、茉白さんが前向きな気持ちのまま結婚してくれるように頑張りますね。」

笑顔の影沼の口から“結婚”という言葉を聞いて、茉白はその言葉の重さを感じた。

(大丈夫、そのうち影沼さんと結婚することが当たり前になる…)



「今日はスワンさんなので。」
「直帰ね。いってらっしゃい。」

「いってきまーす!」
その日の夕方、莉子が元気よく営業に出かけて行くのを茉白が見送る。

「スワンさんというのは?」
影沼が茉白に聞いた。茉白はスワン用品店のことを影沼に説明する。

「それでこの時間に出て毎回直帰なんですか?」
影沼はどこか呆れを含んだように言った。

「月イチですし…ちゃんと受注できてますから、大目に見てあげましょうよ。」
茉白がフォローするように言った。

「ちゃんと、ねぇ…」


数日後
茉白は預けていた傘のサンプルの返却を受け取るため、シャルドンの本社に顔を出していた。

「え゙ぇえ!!!」

商談ルームで、米良がこの世の終わりのような形相で、部屋全体に響くような低音の驚きの声を上げる。
茉白から影沼と結婚するつもりだという報告を受けたせいだ。
隣にいる遙斗は涼しい顔をしている。

「どうしてですか!?」

「どうしてって…米良さんこそ、どうしてそんなに怖い顔…」
茉白はあまりの反応に怯えたように言った。

「いや、だって茉白さん…」
米良はチラッと遙斗の方を見たが、遙斗は変わらず涼しい顔だ。

「お恥ずかしい話ですけど、LOSKAの経営状況って私が思ってるよりずっと悪かったみたいで…LOSKAを守るにはこれが一番良い選択なんです。」
茉白は米良に心配させまいと、にこっと笑って言った。

「前向きに考えるって言っただけで父もすごく喜んでくれていて、ここ最近見たこともないくらい元気なんです。」

「そうですか…いや、でも…」
< 90 / 136 >

この作品をシェア

pagetop