冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「え…?」

茉白はまた、縞太郎の言葉の意味を理解するのに時間がかかってしまった。

「入社…?それに…営業部長?いきなりですか?」

現在は縞太郎が社長と営業部長を兼任し、茉白ともう一人、30代のベテラン社員が主任をしている。

「実はな、茉白がAmselさんに行き始めた頃から影沼君に営業としての意見やノウハウをもらいながら、彼のメソッドでみんなに営業活動をしてもらっていたんだ。」

「え…なにそれ…私聞いてないです…」
茉白は戸惑いを隠せずに言った。

「茉白はそうやって不信感を露わにして拒否反応を示すのがわかっていたからな。」
縞太郎が溜息混じりに言った。

(なにそれ…拒否反応って…)

「拒絶してるわけじゃなくて、慎重に判断した方が良いって思っているだけです。他所の会社の人が急に営業部長なんて、LOSKAらしくな—」

「それが拒否反応だって言ってるんだ。」
縞太郎はまた溜息を()いた。

「いいか茉白、これがこのひと月の受注金額のデータだ。前月、昨年の同じ月との比較もある。」

縞太郎が茉白の前に数字が印刷された紙を差し出した。
茉白は怪訝な顔でその紙に目を通した。

「…え…」

(前月比120%、昨対(さくたい)…150%…)
昨年の同じ月に比べて、商品の注文が1.5倍になっている。

「他所の人を急に営業部長にするんじゃない、ちゃんと実力を示してくれたから営業部長になってもらうんだ。」

「………」
茉白はそれ以上何も言えなくなってしまった。

「話は以上だ。わかったら行きなさい。」


「………」

茉白は席に戻ってからもしばらく放心していた。

影沼が営業部長になることがショックなのではない。
自分が必死になって伸ばそうとしてきた受注金額を、影沼が、外部の人間が簡単に伸ばしてしまったことがショックでたまらなかった。

(私のやり方って間違ってたんだ…私じゃダメだったんだ…)
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