冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
昼休み
「茉白さん、お昼、一緒に出ませんか?」
影沼が茉白をランチに誘った。
茉白は多少は気持ちが落ち着いたものの、まだ動揺したままだ。

(…影沼さんが悪いわけじゃない…)

「…はい」

影沼に連れ出される茉白の背中を莉子がじっと見つめていた。


「…すごいですね、ひと月であんなに受注が伸びるなんて…」
二人で入った中華料理店で茉白が言った。

「いえ、Amselのやり方を試してみたらハマっただけですよ。」

「それがすごいんです…私のやり方は間違ってたんだなって…」
茉白は力の入らない笑顔で言った。

「茉白さん、誤解しないでください。」

「え…」

「私は別に茉白さんの営業を否定するつもりではありません。LOSKAを良くするためにお力になれればという気持ちで動いているだけです。」

「………」

「そろそろ正式なお返事をいただけませんか?」

「え…」

「ずっと、前向きに考える、と保留にされたままでしたけど、1か月で成果を上げたつもりです。良いお返事をいただきたいのですが…」

「あ…」

(ずっと保留にしてたけど…こんなに結果を出してくれたのに、これ以上待たせたら失礼だ…)

(この人はきっと本当にLOSKAを守ってくれる。)

(Yesって言わなくちゃ…)

(…でも…)

まだ遙斗の顔が浮かんでしまう。

「…えっと…」

「まだ、時間が必要ですか?」

「ごめんなさい、もう少しだけ…」

俯く茉白にわからないよう、影沼はがっかりしたような顔をした。

(私…もう諦めるって決めたはずなのに…全然覚悟が決まってないんだ…)

月末、影沼の正式な入社と営業部長への就任がLOSKA社内に発表された。
それを聞いた莉子や佐藤は、どこか失望したような顔をしていた。
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