天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
天使長の仕事
「大魔女アレクサンドラの処遇についてなのだが」
グルシアは、自分の配下のアークエンジェル数人と会議室の長机を囲んでいた。
「アレクサンドラは、ニンゲン界に降ろしてあります」
部下の天使が、報告を始めた。
「グルシア様のお住まいは、日本の東京郊外、
3LDKマンションを押さえてあります。
隣が教会ですから、備えは万全です」
グルシアが、うなずいた。
「わかった。
では、私は比較宗教学の大学教授、漆原要(うるしばら かなめ)でいいな。
前にも使ったやつだ。
それで、アレクサンドラは・・」
「漆原サンドラ、ご夫婦という立場で、マンションには入居します」
「・・・・んと、まぁ、いいが」
「24時間管理体制なので」
魔女と夫婦ごっこか、いやな予感が山ほどするが・・
仕事は、進めなければならない。
「アレクサンドラは、外国人の父と日本人の母との間に出生した子どもに設定しています。
多少、おかしな言動があっても、
外国育ちなら周囲も寛容かと思い」
部下の天使は、ほんとによく気が利く。
今まで敵だった奴と、夫婦として生活できるのか、
グルシアは、腕組みをして、宙をにらんだ。
徴(しるし)をつけられなければ、封印するしか手段はない。
自分だって、浄火の炎で焼き殺される危険性は冒したくない。