天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
下級天使は
<こんなやつのために、動くのはごめんだ>という、顔をしたが

「こいつは、ここでは魔力は使えない。ニンゲンと同じだ。
魔力を行使できるのは、魔界フィールドだけに限定される」

下級天使は、台所にある冷蔵庫から
ミネラルウオーターのペットボトルを持ってきて、魔女の側に転がした。

魔女は、すぐにふたをひねると、ごくごく飲みはじめた。
よほど、喉が渇いていたのだろう。

グルシアは、ベッドに横座りして、水を飲んでいる魔女を観察した。

拘束衣の下は、茶色の熊の着ぐるみを着ている。

細く華奢な手首には、まだ赤く腫れた跡が残っていた。

陽に当たったことのないような青白い肌、紅い唇は妖艶で魔女らしい。
切れ長な瞳と、整った鼻筋はきつい印象だが、誰が見ても美少女と言えるだろう・・

ふぃーーーー

魔女はペットボトルを膝に置くと、大きな息を吐き、
グルシアの顔を睨み付けた。

「もう一度、聞く。本来のお前の姿は、何だ?」

グルシアは黄金のナイフの刃先に指先を触れながら、質問をした。

「ヒキガエルだろうが、たぶん」
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