天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
「ヒキガエルは人間のつくった
おとぎ話だ。嘘をつくな」

その追及に、魔女は
「いろいろな姿になったから、
本当の姿なんて、もうわからない」

魔女は横に首を振り、反抗的な
態度を見せた。
「私に徴(しるし)つけようとすれば、お前も死ぬ」

グルシアはその挑発を、冷静に受け止めた。

「そうだな。
しかし、なぜ、魔女が<百合>として存在しているのか知っておきたい」

新しい戦略のひとつなのか?
偶然なのか?

魔女は、はぁと息を吐いて
「百合?ああ、処女のことか?」

「ああ、天界では<百合の花>と言っている」
グルシアは、魔女から目を離さず答えた。

「それはプライベートな問題だ!
おまえらに説明する義理はない!」

魔女は、ペットボトルをグルシアに投げつけようとしたが、
直前で、ペットボトルは軌道を変えて床に落ちて転がった。

グルシアは床のペットボトルを、指先で持ち上げて
片手でひねると、カシャっと乾燥した音を立ててつぶれた。

「今の立場をよく考えろ。
ここでは、お前の魔力は封印されている。
普通のニンゲンと同じだ」

グルシアは、目の前の魔女の言動を観察していた。

「このまま、何も飲まず、食べず放置されたら、ニンゲンの体は弱りはて死ぬ。
お前がそれを望むなら、それでもいいが」
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