天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
「どこの社会でもそうだろうが、
やっかむ、嫉妬する奴は必ずいる。
蹴落とそうとする者、引きずり降ろそうとする者、魔女はそれが特に強い」

魔女は、ワインをグビッと飲み干した。

「アタシは成績が優秀なので、
師匠も、一目置く存在だったが、
それをおもしろくないと思う輩(やから)がいた。
同じ大魔女のリリカだ。
ささいな事で、いやがらせが突然発生するのは、ニンゲン界でも同じだろう」

この魔女は、見かけによらず、苦労してきたのか?
グルシアは、ふと感じた。

「魔女の学びの中で、ニンゲンのオトコをいかに誘惑するか、
虜(とりこ)にするのかという授業がある。
もちろん、<ラブ>テクをマスターしなくてはならないのだが、
アタシの師匠は、ババァ魔女だったので、
めんどうくさがって、そのカリキュラムは別の魔女がやることになっていた」

ハニートラップ研修・・
グルシアは再度うなずいた。

「リリカはそっちでは、自信があったわけだ。
あいつは早熟で、ずいぶんオトコを食っていたしな。
それを自慢にもしていた」

魔女はグラスの縁を、指でなぞった。
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