天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)

魔女との生活

<魔女との生活・初日・次の日>

早朝、グルシアは目が覚めると、すぐに隣のベッドを確認した。
掛け布団に小さな人型の膨らみ。

グルシアはベッドサイドに立ち、魔女の寝顔を眺めた。

幼いこどものように、少し口を開けて、頬をピンクにして眠っている。
眠りは邪悪を封じる。

まずは、この魔女をニンゲンの生活に慣らすことが最優先なのだ。

グルシアは、音を立てないように、洗面所に向かった。
顔を洗い、ひげをそる。
歯を磨き、シャワーを浴びて、体を拭いていた時だった。

バタン・・・
なんの音だっ?

グルシアは、腰にタオルを巻いたまま、寝室に走った。

魔女が着ぐるみ姿のまま、リビングの扉の近くでつっ立っている。

「ど、どうしたぁ!!」

魔女は何か、哲学者のような、複雑な顔つきをして言った。

「ああ、これって、この感じ・・ニンゲンの体だから?
おしっこ?したいかも・・」

そうだった!!!

この魔女は、ニンゲン界に滅多に来ない。
ということは・・
ニンゲンの体の扱いにも、慣れていないのだ。

「トイレかぁ!お前・・
どうするのか・・知っている?」

「何となく・・場所は・・」
魔女は、こころもとなげに首をひねった。

「こっちに来い!!早く!!」

グルシアは、廊下に走り出て、急いでトイレのドアを開けた。

「便座のふたを開けて座れ!
そこでするんだ!!」

「そんなの、やったことないし・・」

くわぁーー、
なんてこった!!
トイレットトレーニングからやるのか。
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