天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
グルシアは少し安堵した。

「俺は天界の会議に出なくてはならない。夕方には戻る。
わかっているな。お前はここからは出られない」

魔女は椅子の上で体育座りをして、顔を埋めた。

「コーヒー飲みてぇ・・」

グルシアが立ち上がった。

「コーヒーは・・台所に粉とコーヒーメーカーがある。
使い方は・・ああ、時間がないな。自分で調べろ」

魔女はスマホを手に取り、ポツポツ何か打っている。

「魔界との連絡も、一切取れないからな。
この場所は結界が張ってある」

グルシアは、アタッシュケースを手に取った。

「トイレは・・一人でできるな」

魔女はスマホに目をやりながら、コクコクうなずいた。

「では、おとなしくしていろよ。・・行ってくる」

魔女がグルシアの顔を見上げたので、コホンと小さなせきをして

「こういう時は、<いってらっしゃい>と言うのが、ニンゲン界のマナーだ」

魔女は、興味なさそうに、またスマホに目を落としたが

「いってらっしゃい・・なんだ」
小さな声でつぶやいた。

こいつは、反抗期の女子中学生か?
グルシアは大きくため息をついて、玄関のドアをあけた。
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