天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
「ニンゲン界の家、テーブルの上には必ず花がある。
だから一緒に頼んだ」

ドラマかCMか、見ていて気が付いたのか。

「そうか・・」

多少形が崩れているが、ホットケーキを皿にのせて、手早くテーブルの上に置いた。

「早く食え、冷めてしまう」

魔女は・・なぜか、口を尖らして、グルシアの顔を見ている。

「早く食えやっ!!」

魔女の手料理・・
グルシアは、思わず苦笑してしまった。

「いただきます」

口の中にバターとバニラの香りが広がり、ほんのりと甘い。
苦いコーヒーとのマリアージュだ。

「おいしいよ。とても」

「そうか・・よかった」
その言葉に、魔女は緊張が解けたのか、
自分のホットケーキに、これでもかとメープルシロップをかけて、大きく口を開けて放り込んだ。

「うんまぁい・・」

魔女が満足げに微笑んだ。

こいつは、甘い物を食っている時は、本当に幸せそうな顔をする。

グルシアはコーヒーをすすった。
「コーヒーと合うな」

「うん」

テーブルの上、小雪のような霞草が微かに揺れる。

魔女は邪悪な存在なのだが・・
他愛もない会話、新婚生活は穏やかだ。

「ところで、どんな物を買ったんだ?」
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