天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
笑っているサリエルが、急に真顔になり、最後の文を指さした。

「<封印される前に、やること>と書いてある」

サリエルは、じっと紙片を見つめていた。

「サンドラちゃん、やっぱりいろいろ考えていたんだね。
明後日が、無害化測定試験だろ」

グルシアがうなずいた。

「無害化されても、徴(しるし)がつけられなければ、どっちにしても封印措置になる?」

サリエルの疑問に、グルシアは再度うなずいた。
「まぁ、そうなるだろう。
徴(しるし)のない魔女は、ニンゲン界にはおけないからな」

「それならこれは、サンドラちゃんのやりたい事リストだね。
僕だったら、すぐにレンタカー借りて、温泉、ワイナリー、酒蔵めぐりに連れて行くけどね」

グルシアは、重たげに花弁が揺れている百合を見続けていた。

魔女は、掃除や洗濯、料理も頑張ってやっている。

ニンゲン界のテレビやネットの学習成果だ。

無害化が進んでいると感じられた。

魔女は、自分の作った料理を出す時は、エネラルドの瞳を細め、照れ隠しのように口を尖らせる。

グルシアの反応が、とても気になるようだ。

「おいしい」
と言うと、ホッとしたように笑顔が出る。
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