天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
グルシアの隣に、ゴスロリファッションの魔女が立っている。
「こちらの可愛らしいお嬢様は?」
サリエルは、わざとらしく質問した。
「ウルシバラのヨメのサンドラと言います。初めまして」
魔女は張り付けたような笑顔で、ぎこちなく頭を下げた。
「ははぁ!!こんなにお若い奥様がいらっしゃるとは・・漆原先生も隅にはおけませんね」
サリエルの両手を上げたオーバーなアクションに、グルシアはおもいっきり額にしわを寄せた。
「それでは、どうぞ、中にご案内しますよ」
サリエルが正面の大きな扉を開いた。
中は薄暗く、ろうそくの明かりがもれ出ている。
魔女は不安なのか、そっとグルシアの指に自分の指を絡めた。
「大丈夫だ。問題ない」
魔女の指が冷たい。
「うん・・」
グルシアは少し力を入れて、魔女の手を握った。
「あったかいんだ」
魔女がささやいた。
それを見て、サリエルが肩を震わせて笑っている。
しゃくにさわるが、ふりほどくわけにもいかない。
天界関係者だろう、教会の隅に数人、固まってこちらをみて、ひそひそと話している。