天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
その光はサイリウムのように、幾重にも重なり、絡み合って魔法陣を描くようだ。

魔女の音が変わった。テンポが速い。

その帳(とばり)が開けて、違う風景が見える。

そこは場末の酒場だ。

男たちはたばこをふかし、酒を飲み、大声で笑い・・・・

古ぼけたピアノを弾く、酔っぱらいのオヤジから、その指先から音が跳ね出る。

調子っぱずれの音に合わせて手拍子や、足を踏み鳴らす。

スイング、スイング!!!

老いも若きもステップを踏み、手を取り合い、ダンスが始まる

1日の労働が終わり、酒を酌み交わして、人生を楽しむ時間だ。

魔女とのセッションは楽しい・・高揚した気分になる。

曲が終わった。

パチパチパチ

サリエルが拍手をしていた。

「途中から意外な展開でしたね。
ジャズアレンジですか。楽しい時間でした」

グルシアは、隣に座っている魔女の顔を見た。

魔女はふふっと笑い、親指を突き出し、言った。

「グジョブ!!楽しいね」

楽しい・・
そう、楽しかった。

グルシアは立ち上がった。
試験は終わったのだ。


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