天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
「それでは、別室で打ち合わせを」

サリエルが案内しようとした時、

「アイスが・・食べたい」

魔女が、グルシアの上着の裾を引っ張った。

「そうだな・・一人で帰れるか?隣だから大丈夫か」

魔女は、コクンとうなずいた。

「さよーならぁ・・ありがとうございました」

魔女はぺこりとサリエルに向かって、頭を下げると、出口の扉に走って行った。

その姿を見送ると、サリエルは感心したように

「すごいね。君になついている」

「情が移るのは、よくない。
判断が歪むから」

グルシアは、複雑な表情を浮かべて、自分に言い聞かせるように言った。

「かわいい奥様だね、いや、パパと娘、うーーんと、地下アイドルと・・マネージャーかな」

サリエルがあごに手をやって、グルシアをみると

「そんな事より本題だ。判定は?」

「判定不能、途中でジャズに変わっちゃったからね。
グルシア、君の音を、あの可愛いらしい魔女ちゃんが乗っ取った」

「あいつには、何らかの力がまだ、あるのかもしれない」

グルシアは腕組みした。

「でも、邪悪ではないと思うよ。楽しくて、みんなをハッピーにする音だ」

サリエルは微笑んだ。

「それにグルシア、君も楽しそうに見えた」
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