天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)

リリカとの遭遇

<リリカとの遭遇>

「キャハハハ・・・」

こんもりとした常緑樹の茂み、塀の鉄柵から、かん高い女の笑い声が聞こえる。

「今日、アンタの泣き顔をわざわざ来たのよ。
これから、封印されるんでしょう?」

その声の主は、背の高い、茶色の毛皮のコートを羽織った妙齢の美しい女だった。

持っていたたばこを、アスファルトの地面に落とすと、細いピンヒールの先で、虫をふみつぶすように踏みにじった。

魔女は、マンションの壁に背をつけていたが、その女と対峙するように体を構えていた。

「お前だって、いつどうなるか、わからんぞ、リリカ」
そう言って、
壁に背中をつけながらも、入り口のほうにじりしりと移動を始めた。

マンションの中には、邪悪な魔力を持つ者は入れない。

「次はお前がターゲットになるはずだ。
天界の力はあなどれないぞ」

「あら、あら、負け犬の遠吠えってやつね。
あんたが捕まって、今、私が魔女部門のリーダーになっているの」

リリカは、毛皮のコートの打ち合わせを開いて、胸の谷間から黒いナイフを取り出した

「私がここで封印しちゃおうかしら。
今のアンタはニンゲンだもの。簡単だわ」

それから、細い靴のヒールで、コンコンと地面を叩いた。

「この場所に封印すれば、アンタは毎日、毎日、ニンゲンに踏みつけにされるのよ」

「勝手な事はさせないっ!!」

グルシアが、黄金の長剣を下段に構えて、壁に張り付く魔女の前に大きな翼を広げて出現した。

「あらぁ、素敵な翼の天使長様、あなたも・・なかなかね」

リリカが紅い唇に、人差し指を当てて投げキッスを送った。

「アレクサンドラはねぇ、できそこないの魔女だから、さっさと
ぽいしちゃいなさい。
それとも、天使長様は、こーいうガキみたいのがご趣味?」
< 56 / 67 >

この作品をシェア

pagetop