天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
魔女はベッドの端に座り、ペットボトルの水を一口飲むと

「よくわかんねーけどさ、魔界より、こっちのほうがおもしろいし、楽しいと思ったのは確かだな」

グルシアはティッシュの箱を魔女に渡すと、またベッドに座った。

「俺は24時間、お前の事を考えていた。
サリエルに言われたよ。恋する人を思うようだって」

グルシアは背中を丸めて、自分の手の平を見た。

「ああ、アタシだってそうだよ。
アンタを出し抜くために、どうすればいいのか、いっつも考えていたし・・」

魔女は、びぃーーーーっと鼻をかむと、グルシアのほうを向いた。

「でも、それも終わりだ。
アタシを封印すれば、アンタもこの仕事から解放されるだろ?」

グルシアに向けられた瞳は、やはり美しいエメラルドグリーンで、雨にぬれているように艶やかだ。

「徴(しるし)があれば、お前はここで生きていける!!」

「だからさぁ、それは無理だって。アンタも焼かれてしまうって」

グルシアは、鼻が赤くなっている魔女を見た。

「俺は・・お前にどうやって徴(しるし)をつけたらいいのか、何かやり方があるはずだ」
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