天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
「まだ、なんともない・・そうだよね」

「ああ、確かに、いいワインだ」

グルシアは、静かに微笑んだ。

「次は・・俺からお前に飲ませる。
お前が飲みこんだら・・
俺の徴(しるし)が・・取りあえず<仮>だが、つくだろう。
ワインが緩衝材になるから、ダメージは最小限度になると思う。
このワインが、俺とお前をつないでくれる。」

堕天使・・今ならわかる。

魔女と恋に落ちてしまう、自分でも押さえられない、突き上げる強い感情を持つことが。

二人とも業火に焼き尽くされようとも、離れることができない。

「ためらうな!!」

その声に押されて、魔女はワイングラスを片手に持って、グルシアの膝に座った。

そして首に腕をまわして、耳元でささやいた。

「約束だよ。ブドウ畑やワイナリーに行こうね。
また、ピアノも一緒に弾きたい」

「必ず、約束は守る」

「幸せって・・こういう気持ちなんだね」

「違う・・それは愛しているという感情だ」

魔女は、自分の額をコツンとグルシアの額に合わせた。

「愛している」

「俺も・・ずっとずっと前から、お前を愛していたのだろう」

魔女が強く、グルシアを抱きしめた。
< 64 / 67 >

この作品をシェア

pagetop