イケメン弁護士は再会した許嫁に愛を囁く～お前は俺のもの

　
　「まあ、覚悟してきてくれ。こちらも覚悟があるんでね」

　いつもならここで黙って引くのだが、今日は言った。

　「覚悟どころか、私は人生をかけてお話しに行きます」

　真顔で返すと、社長は驚いた表情をして俺を見た。
　会釈してエレベーターに乗ると、扉を閉めた。

　冗談じゃない。覚悟？そんなもんで俺の決意を覆せると思うなよ。茜は俺のもうひとつの人生だ。取り上げようなんて半端な覚悟で来るなら俺は人生かけて阻止するまでだ。

　法務部のフロアで降りると、また会計部の女子達がざわざわ始まった。

　「あの、法務部ですか？ご案内します」

　巻髪のお姉さんが前を歩き出した。頼んでないんだが。というか、どうやったら迷うんだよ。真っ直ぐ奥に進むだけなのに。

　「今日は打ち合わせか、何かです？」

　「……はい。もう結構です。まっすぐ行くだけですので」

　そう言って、彼女を追い越して歩いて行く。

　バタバタという音がして、背中を叩かれた。

　「……ハアハア。来るの早いよ、新藤先生」

　振り向くと茜だった。

　「ああ、少し早く着いたんでね。まずかったか？」