図書館の彼
また別の日。
その日も図書館であの日の彼を見かけた。
彼は真剣になにかの本を読んでいるようだったけど、私の視線に気づいたのか、こちらを見て微笑んだ。
「この前の本、借りてみました。」
彼は私に近づいてくると、手に持った本を掲げて言った。
それは前に私が彼に紹介したものだった。
「どうでした?」
「とても興味深いです。
主人公を変えた“恋”というものが何なのか気になります。」
こんなに美形であれば彼女のひとりやふたり過去に居てもおかしくない気がするが、そんなこともないんだろうか。
「そのうち分かるといいですね。」
「はい。」
私はじゃあ、と軽く会釈をしてその場を離れた。
確かにあの本は内容は面白かったけど、私的には主人公の背景が結構重くて暗い気持ちになってしまった。
けれど彼はキラキラした顔で、恋が気になると言っていた。
ただ違う感性を持っているだけの話ではあるけど、本の話を誰かとすることなんかなかったから、それもあってか彼のことが気になった。
彼の何が、といえば、どういうことを考えながら本を読んでいるか、というふうな意味合いであって、特に見目良いだとかは関係ない。
また会えるといいな。