ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
王子とシンデレラは幸せになりましたとさ
婚姻届を提出し、昴の両親にも改めて挨拶をし、晴れて花蓮は桜杜花蓮となった。
スーパーは勤務時間を少し短くしたが、辞めることなくそのまま働いている。
結婚後に氏名変更の書類を提出した時は、職場のみんなにたくさん冷やかされた。
「花園みたいな綺麗な名前になったね」
桜に花に蓮に。山根に言われて、そういえばと気がつく。
名前負けしないように、常に花のように明るく過ごしたい。
家族三人での生活は順調で、毎日が満たされていた。
順風満帆な日々が続き、半年ほど経ったころ体に異変が現れる。
眠くて朝起きられないし、微熱が続いた。
胃がむかむかとして食欲がなく、貧血なのか、立ち眩みすることが頻発した。
なんとなく予感があって、仕事帰りに薬局で検査薬を買ってきて夕食前に検査をした。
子育ては経験があるが妊娠は初めてだ。やけに緊張しながら判定の窓を確認すると、うっすらと陽性のラインが見えた。見間違えではないと、説明書と検査薬を何度も見直す。
「あっ……」
検査薬を持つ手が震える。
「赤ちゃんだ……」
ゆかりも当時、こんな風に歓喜したのかと思ったら、涙が込み上げた。
「ただいま」
ちょうど昴が帰宅する。
「あ、おかえりなさい」
先にリビングにいた歩那に抱きつく昴に声をかける。昴は目ざとく花蓮の様子に気がついた。
「どうしたの。泣いてた?」
さっと駆け寄ってくれる。
「あ、あの……」
いざ話そうとするとわけもなく不安が押し寄せた。
もし、自分が香のようになってしまったらどうしよう。
歩那を愛している。その気持ちって、この子が生まれたら変化してしまうの?
昴だって、歩那とこの子を区別するわけがない。そうわかっているのに、なぜか怖くなった。
「その……、えっと……」
「どうしたの、ゆっくりでいいよ」
宥められて、深呼吸をする。
昴は花蓮が握りしめているものに気がつく。
「花蓮、それって……」
「よ、陽性だったの。わたし、昴さんの赤ちゃんが……」
「ほんとうか!」
昴は検査薬を自分の目でも確認すると、歩那に駆け寄って高い高いをした。
「やった! 歩那お姉ちゃんになるぞ!」
「ねーね」
「そう、ねえねだ。家族が増えるんだって。うれしいな! ほら、花蓮もおいで、四人でぎゅーっとしよう」
花蓮は昴と歩那に飛びついた。
「あ、こら走ったり無茶はだめだよ」
昴は心配そうにお腹を撫でた。
「ぎゅうう! あーちゃんねえね!」
「うわあ、すごいな。性別はどっちかな。楽しみだなぁ」
目をきらきらとさせる昴にさっきまでの不安がかき消される。
(そうだ。こんなに幸せなのに、何を不安に思うことがあったんだろう)
うれしそうな昴の顔をじっと見ていたら、それに気づいた昴が花蓮の頭にぽんと手を置く。
「幸せをありがとう」
不安だったことを見抜かれていたのか、その手は何度も頭を撫でた。
最愛の人に、幸せを与える存在になれている。
それは自信となり、花蓮をより強くさせた。
了
スーパーは勤務時間を少し短くしたが、辞めることなくそのまま働いている。
結婚後に氏名変更の書類を提出した時は、職場のみんなにたくさん冷やかされた。
「花園みたいな綺麗な名前になったね」
桜に花に蓮に。山根に言われて、そういえばと気がつく。
名前負けしないように、常に花のように明るく過ごしたい。
家族三人での生活は順調で、毎日が満たされていた。
順風満帆な日々が続き、半年ほど経ったころ体に異変が現れる。
眠くて朝起きられないし、微熱が続いた。
胃がむかむかとして食欲がなく、貧血なのか、立ち眩みすることが頻発した。
なんとなく予感があって、仕事帰りに薬局で検査薬を買ってきて夕食前に検査をした。
子育ては経験があるが妊娠は初めてだ。やけに緊張しながら判定の窓を確認すると、うっすらと陽性のラインが見えた。見間違えではないと、説明書と検査薬を何度も見直す。
「あっ……」
検査薬を持つ手が震える。
「赤ちゃんだ……」
ゆかりも当時、こんな風に歓喜したのかと思ったら、涙が込み上げた。
「ただいま」
ちょうど昴が帰宅する。
「あ、おかえりなさい」
先にリビングにいた歩那に抱きつく昴に声をかける。昴は目ざとく花蓮の様子に気がついた。
「どうしたの。泣いてた?」
さっと駆け寄ってくれる。
「あ、あの……」
いざ話そうとするとわけもなく不安が押し寄せた。
もし、自分が香のようになってしまったらどうしよう。
歩那を愛している。その気持ちって、この子が生まれたら変化してしまうの?
昴だって、歩那とこの子を区別するわけがない。そうわかっているのに、なぜか怖くなった。
「その……、えっと……」
「どうしたの、ゆっくりでいいよ」
宥められて、深呼吸をする。
昴は花蓮が握りしめているものに気がつく。
「花蓮、それって……」
「よ、陽性だったの。わたし、昴さんの赤ちゃんが……」
「ほんとうか!」
昴は検査薬を自分の目でも確認すると、歩那に駆け寄って高い高いをした。
「やった! 歩那お姉ちゃんになるぞ!」
「ねーね」
「そう、ねえねだ。家族が増えるんだって。うれしいな! ほら、花蓮もおいで、四人でぎゅーっとしよう」
花蓮は昴と歩那に飛びついた。
「あ、こら走ったり無茶はだめだよ」
昴は心配そうにお腹を撫でた。
「ぎゅうう! あーちゃんねえね!」
「うわあ、すごいな。性別はどっちかな。楽しみだなぁ」
目をきらきらとさせる昴にさっきまでの不安がかき消される。
(そうだ。こんなに幸せなのに、何を不安に思うことがあったんだろう)
うれしそうな昴の顔をじっと見ていたら、それに気づいた昴が花蓮の頭にぽんと手を置く。
「幸せをありがとう」
不安だったことを見抜かれていたのか、その手は何度も頭を撫でた。
最愛の人に、幸せを与える存在になれている。
それは自信となり、花蓮をより強くさせた。
了