ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
「ひとつひとつ、現場で何がなくなったか検証しないといけないんです。ちょっと酷な作業になりそうなので、頼れる方がいるといいなと思いましてね」

(そうか。それで俺に先に話したのか……)

気転の利く警察官に感謝をする。

「僕は彼女の婚約者です。いろいろ精神的に参っているようなので、今後のご連絡は僕のほうにしてください」

多少の嘘は方便だ。
少し前まで本当に婚約者だったのだから、問題あるまい。

連絡先を伝えると話を終わりにし、花蓮の所へもどった。

今にも倒れそうなほどショックをうけている花蓮の手を握ると、すがるように強く握り返してきた。
男に襲われていたあの日、強引にでも花蓮をマンションに連れて行ってよかった。

あのままアパートにいたら、花蓮本人が襲われていたかもしれないと思うとぞっとする。
このアパートは引き払わせよう。
家財も服も破棄だ。

誰がさわったかわからないものを花蓮に使わせたくない。
花蓮が悩んでいたので保留にしていたが、やはり早急に被害届を出すべきだった。

「はぁ」

防げなかった悔しさが、ため息となってでる。

しかし不幸中の幸いは、自分が傍に居てやれることだ。子どもとふたりきりだったら、さらに追いつめられていただろう。
気丈にふるまって見せてはいるが、心が折れてしまわないか心配だ。
花蓮の手は震えていた。

「俺が君を守るから、どうか頼って」

彼女を抱き寄せると、素直に胸に顔を寄せた。

「昴さん……」

「辛いことは一緒に受け止めさせて。花蓮はひとりで抱えこみすぎだ」

花蓮は俯く。
彼女の瞼が触れたシャツが、じわりと熱をもち、次にひやりとした。
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