不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
私は突然話し掛けられたことにも、相手が正広だったことにも驚いて返事をすることを忘れて立ちすくむ。


「どうかした?」


正広が首を傾げて怪訝そうな表情になった。


「う、ううん。別に、なんでもない」


慌てて左右に首を振る。
まさかこんなところで好きな人と会話ができるなんて思っていなかった。
どういう会話をすればいいのかわからなくて、言葉が続かない。
ただ、体温が急上昇していくことだけは自分でもハッキリと感じ取っていた。


「今日は帰りが遅いんだね?」

「う、うん。ちょっと考え事してたら遅くなっちゃって」


たどたどしく返事をしながら自分の足元へ視線を落とす。
真っ直ぐに正広の顔を見ることができない。


「なにか悩み?」

「そ、そういうんじゃないけど……」


まさか本人へ向けて恋愛相談するわけにもいかなくて、言葉を濁す。


「そっか、俺は委員会で残ってたんだ。毎週毎週、色々あって大変だよ」

「そ、そうなんだ」
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