不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
証拠をとる
風翔の暮らしているアパートは私の家からそれほど離れていなかった。
何度か帰り道にばったり出くわしたことがあって、偶然その場所を知っていたのだ。


「行ってきます」


朝食を食べてすぐにカバンを手にした私に母親が驚いたように顔を向ける。


「あら、今日は早いのね?」

「うん。ちょっと、朝の掃除を頼まれちゃって」


適当に言い訳をしてそそくさと家を出る。
風翔がいるアパート付近へ立ち寄ってから登校するつもりだったから、いつもより30分早い。

なにせ最近の鳥殺しは午前の早い時間に行われているとニュースで聞いていたから、この時間になった。
もしかしたら、もっと早い時間かもしれないけれどさすがに早朝に家を抜け出すことは難しかった。

家から出てすぐの十字路を左に曲がりまっすぐ進む。
角まで来たら右だ。

その奥には工業団地に務めている人たちのためアパートや社宅が立ち並ぶ地域になる。
つまり風翔のお父さんは工業団地のどこかの工場勤務ということだ。


「確か、このアパートだったよね……」


沢山のアパートの中でもひときわ目立つ新しいアパートの近くで足を止めた。
以前風翔がここへ入っていくのを見たことがある。
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