不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
なにげなくその様子を見ているとさっきの茂みがまたガサガサと音を立てた。
今度は葉がさっきよりも大きく揺れて、どう見てもハトの大きさではなかった。

私は咄嗟に入り口横にあったトイレの影に身を隠す。
顔だけ出して様子を確認していると、茂みから出てきたのは風翔だった。

風翔は右手にハトを捕まえている。
思わず上げそうになった悲鳴を飲み込んで、すぐにスマホを構えた。

風翔は公園内に人がいないことを確認すると、手の中で暴れるハトを地面に叩きつけたのだ。
ハトは脳震盪でも起こしたのか静になる。
でもまだ生きているのだろう、ハトは足や羽を動かしてどうにか逃れようとしている。

それでもすでに立ち上がることもできない状態で、そんなハトを風翔は無表情に見下ろした。
なにをする気だろうか。

息が詰まるような気分で見守っていると、風翔は学生カバンから何かを取り出した。
それは小学生時代に使ったことのある、彫刻刀セットだった。

風翔が持っているそれは、ここからでもわかるくらい先端が錆びている。
普通に使っているだけならそこまでボロボロになることはないだろう。
木製の持ち手にはあちこち赤黒いシミがついている。

私はゴクリと唾を飲み込んだ。
ここは絶対に抑えておかなきゃいけない場面だ。
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