不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
正広だって、教室内での優の傲慢さを見てきているはずだ。
でも、さっきから会話していても正広は誰の悪口も口にしない。
だから話を聞いていて心地いいのだ。


「優は春菜のことを話してた」

「え？　斎藤さんのこと？」


正広の声のトーンが変化する。
ほとんど前を向いて歩いていたのに、今はこちらを向いて興味津々と言った様子だ。
その変化に胸の奥がうずくけれど、どうにか気が付かないフリをした。


「春菜には年上の彼氏がいるんだって」


自分が意地悪なことをしていることはわかっている。
けれどこうでもしないと正広が春菜を諦めるとは思えなかった。
正広は私の言葉に一瞬表情を無くしたように見えた。

けれど、次の瞬間には「うん。知ってる」と、頷いたのだ。
その返答に今度は私が驚いてしまった。

春菜に彼氏がいることはすでに知っていたらしい。
それでもまだ春菜のことが好きだということだ。

せっかく優から有力情報を入手できたと思っていたのに、これじゃ効果がない。


「くそっ」
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