不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
「ここじゃちょっと話にくいから、向こうへ行こう」


1階には保健室があり、その周辺は人気が少なかった。
保険の先生が部屋の中にいるかもしれないから、あまり大きな声で会話はできないけれど、その必要はない。


「さっき春菜と話をしてたんだけど、ちょっと重大なことすぎて私1人じゃどうにもならなさそうなの」


あくまで春菜のための相談だと思わせる。


「春菜のこと?」


正広の顔色が明らかに変る。
好きな女の情報だから、喉から手がでるくらいに欲しいはずだ。

私は頷くとスカートのポケットからスマホを取り出した。
その画面はずっと録音状態になっている。

このアプリは感度が良くてスカートの中にあってもちゃんと音声を録音してくれる。
不穏ラジオをきっかけにしていろいろな人達の弱みを手に入れてきた私は、アプリも入手していたのだ。


「これを聞いて」


ついさっきの会話をすべて正広に聞かせる。
正広はその間青くなったり、赤くなったりを繰り返して音声を聞いていた。


「春菜、すごく苦しんでるみたい」


正広はこわばった表情のままなにも言わない。
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