不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
聞いていて飽きないし、毒を吐くごとに胸の辺りがスカッとする。


【中西留伊が剣道部に入部していることは、きっと聞いているみんなも知ってるよね?】


その問いかけに思わず頷く。
相手に見えていないのに反応してしまうのは、よくあることだった。


【そぉんな中西留伊だけど、実は彼部内ですっごいことをしちゃってるんだぁ!】


なにをしてるんだろう。
早く、早く教えて!
DJは聞いているみんなが聞き耳を立てる時間を作るように間を開ける。
その間私は拳を握りしめて今か今かと次の言葉を待つ。


【実は彼……部内で後輩をイジメていまぁす!!】


大きな声が脳内に響く。
イジメという単語に心臓がドクンッと跳ねた。
嫌な汗が背中に流れていく。

私は表立ってイジメられているわけじゃないけれど、それでも既視感を覚えずにはいられない。
ベランダに出ているのを誰にも気が付かれずに締め出された。
そしてそんな私を見つけてさげすんだ笑みを浮かべた春菜。

それらが走馬灯のように蘇ってくる。
私は拳を膝の腕の強く握りしめた。
あの出来事をイジメと呼べるかどうかはわからない。

単なる確認ミス。
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