不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
少しも羨ましさを感じることはなかった。
優は強い男と付き合うことがステータスだとでも思っているんだろう。
くだらない雌ブタの考えそうなことだ。

脳筋バカに惹かれるよりも正広のような誰にでも優しくて思いやりのある生徒の方がずっと素敵だ。
正広は友人らに囲まれて楽しそうに笑っている。

その笑い声も下品じゃなく、この場に適した声量だ。
確か正広は成績も良かったはずで、この高校ではトップ争いをしていると耳にしたことがある。
いつも穏やかなその表情を見ていると、こちらまで癒やされていく。
思わず正広に見とれていると誰かが私にぶつかってきた。


「痛っ」


思わず口に出すとぶつかってきた春菜が驚いた様子でこちらを見てきた。


「ごめん。わざとじゃないんだ」


春菜はそう言って両手を顔の前で合わせる。
わざとじゃないのはわかっている。
春菜は人よりも少し体が大きいくせに、自分の体の幅を理解していないのだ。

だから歩く度によく誰かにぶつかっている。
私は舌打ちしたい気持ちを押し殺してうつむいた。

このデブか!
心の中で罵り、春菜がその場から離れるのを待つ。
せっかく正広を見ていい気分になっていたのに、台無しだった。
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