不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
☆☆☆

自室に戻った私は大きく息を吸い込み、両手で顔を覆ってベッドにダイブした。
まさか自分が父親へ向けてあんなことが言えるなんて思ってもいなかった。
両親から言われることを黙って聞いているだけだった自分が、久しぶりに自分の感情を口に出したのだ。

それはまるで自分じゃないみたいだった。
長年黙り込むことに慣れていた私が、少しずつ変化しようとしている。
それもこれも、不穏ラジオが聞こえ始めてからだった。

あのラジオのおかげで私は自分の気持を口に出し始めたのだ。
顔を覆っていた両手で今度は胸にふれる。
心臓がまだドキドキしているのがわかる。

学校内でも勇気を出して小高先生に言いたいことを言った。
これが本来の私の姿なんだと思う。
布団をかぶってギュッと目を閉じていると、またあの音楽が聞こえてきて私は目を閉じた。

不穏ラジオが聞こえてくるときにいつも聞こえてくる音楽はきっと番組のテーマソングなんだろう。
どこかで聞いたことがあるようで、実際には聞いたことがない。

耳馴染みはいいけれど覚えのない音楽だった。
私は頭まで布団をかぶった状態でその音楽に耳を傾ける。
< 59 / 194 >

この作品をシェア

pagetop