不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
もしも優がそれを知っていて体操着を無傷にしていたのだとすれば褒めてやってもいいけれど、そこまで考えた行動を取っているとも思えなかった。


「大丈夫?」


不意にそう声をかけられて振り向くと、そこにはぽっちゃり体型の春菜が立っていた。
春菜も今から更衣室へ向かうようだ。


「なにが?」


私は自分でもびっくりするくらい感情のこもっていない声が出た。
春菜はたじろいだように一瞬視線を外したけれど、すぐに「イジメ」と口にした。

あぁ、そんなことかと思う。
そういえば春菜も優のイジメでは何度か被害を受けていた。
だから気にしていたんだろう。


「別に平気。それより早く着替えないと授業が始まるよ」


着替えの時間を考慮するともう教室を出たほうがいい。
私は更衣室じゃなくてトイレで着替える予定だから、こうして教室に最後まで残っているんだ。

それに、ちょっと試してみたいこともあった。


「あ、そうだね。じゃ先に行くね」


春菜はそそくさを教室を出ていったのだった。
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